コラム

【書評】シークレットレース<ツールドフランスの知らざれる内幕>

どうも、sayranです。

今日はロードバイク関連の書評を記事にしたいと思います。

この本は有名なドーピング告発の本ですね。

タイラーハミルトンのロード選手の足跡に合わせてドーピングの内幕が詳細に語られています。

文章が読みやすいので読み物としても面白いです。

ロードバイクに乗っていてレースに出たことがある人ならよりリアルなものとして感じる事ができます。

そして欠かせないのはランスアームストロングとの関わりです。

ランスアームストロング

ロードレースファンなら大体の人が知っていると思います。

癌から復帰して、ツールドフランス7連覇。

絵にかいたようなサクセスストーリーを体現した人です。

最終的には全米アンチドーピング機関により告発を受け、7連覇はなかった事になります。

ルール違反をしたのは悪い事ですし、はく奪はしょうがないですが、僕はこの人のビジネスマンとしての立ち振る舞いに注目しました。

ツールドフランスにビジネスを持ち込んだ

ツールドフランスは興行なので、根本的にはビジネスです。

ただ、ヨーロッパでの自転車文化の延長というか集大成のような側面もあり純然たるビジネスではないともいえます。

選手は金が欲しいからやってるというより、ロードバイクが好きな人が多いです。自転車文化をリスペクトしています。

暗黙の了解による紳士協定など美しさに重きを置いているようです。

ランスアームストロングは違いました。

プロトンでの振る舞いや、総合系の選手が勝たなくてもいいところで勝つ、有名選手へのリスペクトをしない等です。

異文化に土足で踏み入るあたりはまさにMrアメリカって感じですね。

自らをビジネスシステムに組み込む

この人の場合は、確かに自転車は好きなようですがそこそこ好きなのでビジネスのツールにしたって感じのほうが強いです。

子どもの頃の環境やがんになった事で、なんとしても成功しないといけないという思いが強かったのでしょうか。

初期の頃は、仲間と勝ち取った成果を純粋に喜んでいたようですが、勝ちを重ねていく中で変わっていきます。

自転車メーカー、トレックの株主になったあたりから顕著に見て取れます。

勝てるステージは全部勝ってトレックの優位性を証明する。スポンサーのナイキの宣伝も抜かりがない。

ペダリングスキルも完成されています。

一番参考になるのは、タイムトライアルの動画で、当時の恋人シェリルクロウがいってらっしゃいしてるやつですね。

ペダリングはキレということを教えてくれる動画です。

彼の場合は自分の体、ペダリングのようなスキルまで全部ビジネスツールとして使ったようにしか思えません。

ドーピングもビジネスの一貫

元からの何が何でも勝ちたいという性格もあると思いますが。時代背景もあって自然にドーピングを始めていきます。

この人が他の選手と違うのは、ドーピングもビジネスの一貫としてシステムをより完璧にしたというところだと思います。

より効果のある方法を絶対に見つからない仕組みとして、完成度を高めていく。

ビジネスツールである自分の体にPCのアップデートをするかのように投入していく。

勝ちに対する執念というか、成功への執念としか思えないですね。

その成果もあって、頂点の頃はアメリカ大統領に祝福されるまでになります。

自分の体を成功への手段としてここまで運用するのはすごいですよね。見事な結果まででてますし。

当時のドーピング問題

当時活躍していた人はほとんどドーピングしていたようです。

マルコパンターニ、ランスのライバルのウルリッヒ、サクソバンクの有名な監督のリース、ヒンカピー等

リース監督は引退後に自白、ヒンカピーも数年前の引退間際に自白してますがちょっとずるいですよね。今頃になって言うのは。他の選手は引退させられたり出場停止になってるわけですし。

ドーピングはEPOが一般的だったようです。規則である赤血球50%の割合の中でパフォーマンスを高めるものです。通常のへマグリット値が低いほど効果がある仕組みですね。

もっと効果のあるものとして、自己輸血があります。

事前に自分の血を採決しておいて、レース前に自分に輸血する方法です。

これをやると限界を感じたところで、もうひと頑張りすると簡単に限界を超える事ができるとの事です。

自己輸血は日本の陸上選手もやってた気がするんですが。。。高校生とかですね。最近では鉄分接種が問題になっていました。

粗悪な方法でやると大変なことになるそうで、自分の命を削っていますよね。

著者のタイラーハミルトンのいう「飛んでる」文章の下りは面白いですよ。

こいつやりやがった、って感じですぐわかるそうです。もはや笑うしかとの事です。

追い詰められるランス

最後の方になるとランスがだんだん追い詰められていくんですが、その時のやり取りが面白いです。

ハミルトンが告発を始めたあたりの頃に、偶然レストランでランス一味と鉢合わせになるのですが、その時の突っかかり方がまさにランスって感じです。

金はいくらもらったんだ?お前の人生をメチャクチャにしてやる!こういう具合です。

ランスの突っかかりエピソードは他にもあります。

練習帰りにやばい車に遭遇して完全に頭にきます。そして猛烈な勢いで近道をして先回りをします。

ハミルトンが追い付いた時は、車の運転手を引きずり出してめちゃめちゃに殴っていたそうです。殴るのはあれですが、この気持ちはわからないでもないです。

話がそれましたが、追い詰められる時期はランスの性格と合わせてなかなか読み応えがあります。

事実は絶対に認めない、でももはや言い逃れのしようがないそんな感じです。

ランスから学ぶ事は多い

  • 技術
  • 精神
  • 成功への執着心
  • 異文化への対応等

技術面としてはペダリングですね。ペダリングはランス、体幹で踏む感覚はカンチェラーラというところでしょうか。

精神面は有名な肝心なところでコケる動画で見る事ができます。2003年のツールドフランスですね。あれはドーピング発覚するまでは神動画みたいになっていました。

ちなみにこの時、ハミルトンは皆にランスが復帰するまで待つように促します。ロードレース特有の紳士協定です。

数年後、同じような事がありましたがランスはコンタドールを待ちませんでした。

勝ちに対する執念はけた外れです。

ドーピングでもなんでもやって成功するんだ、という執念。中途半端さは一切ありません。決めたら突き進むのみ。

失敗した点は異文化への対応でしょうか。元々の性格が邪魔をしたのかもしれませんが、異文化へ土足で踏み込むのはよくないです。

これはアメリカにも言えることですね。

この本はビジネスを自分でやってる人にも参考になる面があると思います。

現在ランスは自転車屋を開店してトレックの販売をやってるようです。すっかり落ち着いた感じになってますね。

まとめ

  • レース展開の臨場感が素晴らしい
  • ランスのビジネスマンとしての突き抜け方

ドーピング取引の場面もそうですが、なによりレース展開の詳細が読み応えあります。

ハミルトンが力をつけた頃のランスとのつばぜり合いはみどころです。

そしてランスのビジネスマンとしての突き抜け方、欠点。読みやすく、見どころの多い本となっています。

当時の動画と合わせてみるとなお、楽しめると思います。

最後に、えっ?と思った点が一つ。

タイラーハミルトンは現在、ロードバイクからは完全に遠ざかっているそうです。

あれだけ情熱を注いでいたのに、悲しい話ですね。またいつか趣味として乗ってほしいと思います。

おわり

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